したがって、多次著作物の利用者は「利用する著作物に対する全ての著作権者の利用許諾条件」に従 うことでコンテンツの利用が可能となる。 ここでは利用する著作物に対する全ての著作件者の利用許諾条件として使用料金のみをとりあげる。
各々の著作権者に自由に二次使用料金を指定することを許すと、 コンテンツの価格がどんどん高価なものになってしまうおそれがある。 コンテンツの品質が価格に見合っているかどうかを確かめる為の試用回数を設けて、 「品質に見合った価格の商品が受け入れられる」、市場の原理に委ねることでコンテンツの価格は適 正価格に自動調節される。 超流通では利用料金が高額過ぎると利用されなくなる為、適正価格ではないコンテンツは市場から淘 汰されることとなる。 また頻繁に使用するコンテンツの存在を考慮すると従量料金では使い続ける限り課金されてしまう為、 ある程度利用したらそれ以上の課金を停止する。 よって課金上限回数を設けることとする。 図3.1に一次著作物の使用回数に対する料金体系の一例を示す。
二次著作物において各々の著作権者が自由に試用回数や課金上限額を設定すると、 有料使用回数に対する多次著作物の料金は図3.2に示すように変動する。
一次著作物の利用者に請求する使用料金はAのみであるが、二次著作物の利用者に請求する使用料金 はAにBを上乗せしたものとなる。 三次著作物についてはAにBを上乗せしたものにさらにCを上乗せし、以下多次著作物に対して同様の 処理を行なう。 有料使用回数に対する料金の変動は次数が上がるにつれて激しくなる恐れがある。
また原著作者が設定した試用回数・課金上限回数を継承することにすると、 図3.3に示すように各々の著作者が使用許諾料を自由に設定しても有料使用回数に対する料金 の変動はない。
これならば回数毎の利用料金の変動がない為、利用者に提示される料金がわかり易いものとなる。 しかし原著作者が設定した試用回数・課金上限回数を引き継がなければならないことは、 二次加工者以降にとっての「二次的著作物の利用に関する権利」を制限する短所である。
本研究ではn次著作者が指定する使用料金と、n-1次以前の各著作者が指定する 二次使用許諾料金を区別することとする。
一次著作物の利用における料金配分を図3.4に示す。
二次著作物の利用者に請求される利用料金は 一次著作者への二次使用許諾料金と二次著作者への使用許諾料金に分配される。 二次著作物の使用に伴う料金分配を図3.5に示す。
n次著作物の利用者に請求される利用料金は 1〜n-1次著作者への二次使用許諾料金とn次著作者への使用許諾料金に分配される。 n次著作物の使用に伴う料金分配を図3.6に示す。
尚、二次加工に伴う料金の分配について図3.7に示す。
同じn-1次著作物を二次加工して作成された著作物Aと著作物Bがあるとする。 このAとBのどちらも使用すると、1〜n-1次著作者への累積使用回数を AとBの使用について別個にカウントするべきか、 同じn-1次著作物を基にしたものであるから1〜n-1次著作者への累積使用回数は 共通のものとしてカウントすべきかという問題が生じるその表現内容を加工する機能のみを二次加工 者に提供するようなソフトウエアが必要となる。 n-1次著作物を二次加工して作成されたコンテンツの個数またはその使用回数が多ければ多いほど n-1次著作物が良い評価を受けていることを意味する為、 1〜n-1次著作者への累積使用回数をAとBの使用について別個にカウントする。 これにより利用者の評価に応じた報酬がより正確に1〜n-1次著作者に送られることとなる。
料金の指定については、「定額を指定」、「割合指定」の2方法が考えられる。
料金を定額指定する場合、 n次著作者が指定する使用料金と n-1次以前の各著作者が指定する二次使用許諾料金 を区別した、定額指定による課金方法を挙げることが出来る。
図3.8にこの一例を挙げる。
二次使用許諾料金を割合指定によって課金する方法については、 指定した割合を維持する方法と一次後の著作物の使用許諾料のみを割合指定する方法を挙げることが 出来る。
二次使用料の割合を維持する方法について図3.9に示す。
一次後の著作物の使用料のみを割合指定する方法ついては図3.10に示す。
この様に、二次的著作物の利用価格設定は著作者と利用者の双方にとって 最良であると断言できるものを挙げることが困難である。