超流通とは

超流通とはディジタル情報の円滑な流通の実現によりこれまで困難とされてきた 「ソフトウェア」の量産を可能にするための基盤技術である。 ディジタル情報を「所有する」ことに対価を支払うのではなく 「利用する」たびに使用記録が管理され、それを回収することによって料金を徴収し、 収入を再配分するシステムである。

未来指向のディジタル情報の流通・供給システムは、 次のような性質を満たすべきである。 超流通はこれらの性質を満たすものである。

超流通の定義

ディジタル情報の流通・供給システムとしての 「超流通」は以下のように定義されている。

  1. 情報利用者はディジタル情報をほとんどまたは全く無料 (媒体、手数料程度)で入手することができ、情報提供者(メーカまたは個人)が 指定した条件(次項)の下でいつでも利用できる。
  2. 情報提供者はその情報の利用を許可する条件 (通常は料金の支払い)を指定できる。
  3. 情報提供者が指定する以外の改変は防止される。
  4. 以上の各項のために面倒な手数を必要としない。

情報化・サービス化に適した経済学の再構築を 目指す試みが幾つかなされているが、情報の 価格体系については社会的に明確な回答が なされてないのが実情である。 しかし上記のようなシステムが実現すれば

が明確な基準によって行なわれることになり、 情報の経済的価値を体系づける可能性が生まれる。 このことが実現すれば、 情報提供者の権利と情報利用者の便利さが 保証されることになり、 健全な「情報市場」が成立する。

超流通ラベルとは

超流通ラベルとは超流通を実現するために従来のソフトウェアに付加 しなければならない情報である。例えば「ソフトウェアID」、 「課金情報」、「アプリケーション復号鍵」、「通信手段」などを含み得るが、 どのような情報をどのような形で含むかはシステムの設計による。

超流通ラベルの定義

超流通ラベルは以下のように定義されている。
  1. 超流通ラベル内にはソフトウェアIDと使用記録の作成に関する情報は必須である。
  2. ソフトウェアIDは個々の超流通ソフトウェアを識別する情報であり、 利用料金の支払先を区別するために必要である。

超流通ラベルの記述

超流通ラベルの記述については以下のように定義されている。
  1. 超流通ラベルを記述する方法が プログラミング言語や設計論を限定してはならない。
  2. 超流通ラベルの記述作業と ソフトウェア本体の開発とが独立に行なえることが望ましい。

超流通ラベルの暗号化

超流通ラベルの暗号化については以下のように定義されている。
  1. 超流通ラベルは暗号によって保護されなければならない。
  2. 超流通ラベルの暗号化にはシステム共通の暗号鍵が用いられる。
  3. 超流通ラベルが対応する超流通ソフトウェアから意味的に 分離されないことが要求される(これは超流通ラベルを暗号化するときに ソフトウェアの一部を含めることなどによって実現できる)。
  4. 利用者は暗号化サービスを利用して任意の平文データを暗号化し、 暗号化されたデータの正当性を確認することで、超流通ラベルを偽造し、 あるいは、内容を解読できる可能性がある。

強い防御、ゼロ防御とは

強い防御とはその防御機構を設計・製作したグループが攻撃を試み 攻撃対象を保有して、充分な知識、技術、装置、時間をもって攻撃しても、 暗号の鍵を知らない限り攻撃に成功できないような防御をいう。

ゼロ防御とは「攻撃を阻止することを放棄する」、 また「攻撃が阻止できない水準まで近付いたことが検出されたときに、 防御の対象である価値そのものを破壊する」ような防御をいう。

つまり攻撃が物理的には達成されても、攻撃者の得る利益は「ゼロ」になる。 また攻撃者が所有者であるならば利益を得られないだけでなく、 所有する装置の破壊という損失も受けることになる。

超流通システムとは

超流通システムとは超流通アーキテクチャをもとに 体系化されたシステムのことである。図2.1に超流通システムの一例を示す。 超流通システムは次のような機能を提供する。

このようなシステムでは、価値のある情報を生産・加工した者は誰でも、 安価な流通コストにより大量に情報を提供することができる。 またこのようにして提供される世界中のあらゆる 情報を迅速かつ容易に利用できるようになる。 このように従来の有体物では不可能であった 自由な流通形態、すなわち「超供給」と「超需要」とを 併せた「超市場」の実現の可能性が生まれる。